ネット上での誹謗中傷への法的対応

ネットでの誹謗中傷を原因として痛ましい結果が生じたという話を聞きました。

学校や職場でのいじめの一環としての誹謗中傷、その他嫌がらせの一環としての誹謗中傷、男女関係のもつれやSNS上での不用意な発言をきっかけとした誹謗中傷、匿名報道に端を発した個人特定の動きなど、様々な要因で誹謗中傷に巻き込まれてしまうということはあると思います。そのような場合に個人としてできることを以下に挙げておきます。

まず、いずれの方法においても、何らかの措置をサイト運営者や裁判所に求めるためには、あなたの権利が何らかの形で侵害されている、ということが言える必要があります。オンラインでの誹謗中傷の場合、権利侵害としては、

  • 名誉毀損
  • 侮辱
  • プライバシー権の侵害

が主だったものになるでしょう。

名誉棄損は、「事実を適示し、公然と、人の社会的評価を低下させた」場合に成立します。
侮辱は、「事実を適示せずに、公然と、人を侮辱した」場合に成立します。
この2つは、「事実を適示したかどうか」で区別されます。したがって、「Aさんは、悪い人だ」というのは人に対するマイナス評価ですので、侮辱にあたりますが、「Aさんは、〇〇の犯罪を犯したことがあるから、悪い人だ」という場合は、事実を述べているので、名誉棄損にあたる可能性があります。なお、この事実がウソである場合はもちろん名誉棄損になりますが、事実が真実である場合にも名誉棄損になる可能性がありますので、ネット上にレビューなどを記載するときには注意が必要です(名誉棄損については、ニュース報道など、成立しない例外的な場合がありますが、ここでは割愛します。)。

プライバシー権の侵害については、判例で、要件が明らかになっています。

  1. 私生活上の事実、又は事実らしく受け取られるおそれがある事柄であること
  2. 一般的に公開を欲しない事柄であること
  3. 一般にいまだ知られていない事柄であること

投稿が、上の①から③に該当する場合は、プライバシー権を侵害した、ということができます。

こうした権利侵害があるときには、以下のことを試してみてください。

削除依頼(送信防止措置依頼)

削除依頼は、サイトやSNSの運営者に直接削除を依頼する、という方法です。

方法は各運営者によるのですが、「お問い合わせ」や「削除依頼フォーム」から必要事項を記載して、メールやフォームを送信するという方法があったりします。もっとも、削除依頼ポリシーによっては、このような削除依頼がありましたという事実を公開されることもありますので注意しましょう。この点については、ポリシーなどをよく確認してから行うようにしてください。

また、テレコムサービス協会の送信防止措置手続を使う方法もあります(詳しい流れについては、こちら)。この場合はテレサ書式(こちら)を使用して郵送で依頼書を送ります。

いずれにしても、送信直前のフォームをスクリーンショットする、又は郵送前の依頼書をコピーしたり写真をとったりする、などして、ご自分の手元に写しを残しておくことを強くお勧めします。

なお、サイトなどの運営者と実際の投稿者とは異なることが多いので、むやみに攻撃的に記載することのないようにしましょう。

発信者情報開示依頼

さらに、誹謗中傷の投稿をした本人に対して、損害賠償請求をして凝らしめたい、という場合には、匿名で投稿をした者(「発信者」と言います)の情報を明らかにしてください、という発信者情報の開示依頼をしていきます。

裁判所を使う方法と使わない方法がありますが、使わない方法としては、先ほどのテレコムサービス協会に対して、実際に投稿をした人が誰かについての情報(氏名、住所、メールアドレスなど)を開示してもらうことを依頼する、という手続があります。これについても、書式(こちら)を使用して郵送で依頼書を送ります。

裁判所を使った削除請求・発信者情報開示請求

上の2つの方法は相手にお願いして削除や開示をしてもらう、という方法で、決してあなたにそれをしてもらう権利が当然にある、というわけではありませんので、相手が必ず依頼に応じてくれるとは限りませんし、運営者に対する依頼については無視されることもありえます。

これに対して、裁判所を使って行う方法であれば、仮に裁判所で削除又は開示の決定がされた場合には、原則として、運営者等に削除・開示を強制することができます。原則として、と述べたのは、例えば、会社が外国資本だったりして決定に任意に従わない場合は、強制執行を行うことが難しい場合もあるからです。

裁判所を使う場合には、あなたの権利が侵害されていること、それによって損害が生じる具体的な可能性があることを立証する必要があります。保全(仮処分)という手続をとっていくのですが、訴訟よりもスピード感があり、専門的な部分もありますので、この辺りは、餅は餅屋で弁護士に任せた方がよろしいかと思います。

刑事告訴

以上の方法はすべて民事の手続で、相手に刑事罰が科されるものではありませんが、相手の行為があまりにも悪質である、といった場合には、名誉棄損や侮辱については刑法犯ですので刑事告訴をする、という方法もあります。

注意点など

全体的に注意したい点は、スピード感をもって対処する必要がある、という点です。

発信者情報開示を求める場合、投稿者のログが残っている必要がありますが、ログの保存期間は、運営者等によって3か月から6か月ほどとなっており、その後は何もしないでいると消えてしまい、情報をたどれなくなってしまいます。

また、刑事告訴を行う場合、例えば名誉棄損や侮辱の場合には、犯人を知った日から6か月以内に告訴をする必要があります。

さらに重要なのは、誹謗中傷をした人がアカウントを削除するといった行為に出ることもありますので、気づいた段階ですぐにその投稿のスクリーンショットを撮る、PDFにする、などして証拠を確保しておく、ということです。

以上、長くなりましたが、ネット上で誹謗中傷を受けた場合にとりうる措置としては、ざっと以下のものがあります。

  • 削除依頼(送信防止措置依頼)
  • 発信者情報開示依頼
  • 裁判所を使った削除請求
  • 裁判所を使った発信者情報開示請求
  • 開示された発信者情報に基づく損害賠償請求
  • 刑事告訴

ご参考になりましたら幸いです。