債権法改正・時効の完成猶予と更新

時効期間が進行して時効が完成するのを妨げる事情のことを「時効障害事由」といい、その時効障害事由は、現行民法では、時効の中断及び停止と分類されているところ、改正債権法(一部を除き2020年4月から施行)では、「時効の完成猶予」及び「時効の更新」という概念に整理されています。

多くの本では、
「時効の中断」という概念が「時効の更新」に替えられ、
「時効の停止」という概念が「時効の完成猶予」に替えられた、
と説明されています(潮見佳男教授「民法(債権関係)改正法の概要」参照)。

ピンとこないため、現行法との比較表を作成してみました。

現行民法(改正債権法) 旧法
裁判上の請求 完成猶予(147条1項)

中断(旧147条1号)

支払督促

完成猶予(147条1項)

中断(旧150条)

民訴法275条1項の和解/民事調停法・家事事件手続法による調停

完成猶予(147条1項)

中断(旧151条)

破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加

完成猶予(147条1項)

中断(旧152条)

確定判決等による権利確定

更新(147条2項)

(旧174条の2)

強制執行/担保権の実行/強制競売/財産開示手続

完成猶予(148条1項)

中断(差押え、旧147条2号)

上記事由の終了

更新(148条2項)

仮差押え・仮処分

完成猶予(6ヶ月、149条)

中断(旧147条2号)

催告

完成猶予(6ヶ月、150条)

中断(旧153条)

協議合意

完成猶予(原則1年、151条)

権利の承認

更新(152条)

中断(旧147条3号)

天災

完成猶予(3ヶ月、161条)

停止(旧161条)

 

こうしてまとめると、時効の更新事由は、確定判決又は強制執行等の終了による時効の新たな進行の場合と、従前時効中断事由であった「権利の承認」の場合とであると整理されます。

冒頭の概念整理にあたり、幾分か理解の足しになれば幸いです。

(2019年6月に投稿したarimoto-law.comにおける記事を修正・移行したものです)