離婚を考え始めたら戦略的に動こう<婚姻費用と養育費>

まずは戦略的に動くために、前提を整理しておきましょう。

離婚を考え始めたときに当然考えるべきは、経済問題です。自宅が別々になりますから、出て行く側にとっては当座だけでも引っ越しと新しい家具の購入などが必要になってきます。

そして、いずれの側も今後の生活費をなんとかしなければならないということがあります。今まで同居していた場合は、同居によって節約できていた費用も今後は各自が負担しなければならないといったこともあるでしょう。

専業主婦の方や、家計は助けているけれども自分(とお子さん)の分の生活費を賄うほどの収入を今は得ていないという方は、今後どのように生活をしていくかをきっちりと考えていく必要があります。

成人前の子どもがいない場合、相手からもらえる可能性があるのは、

  • 別居した後から(正確には別居して調停で請求してから)離婚する時点までの「婚姻費用」と、
  • 離婚時に夫婦の財産を分ける「財産分与

の二つです。

成人前の子どもがいて離婚後も子どもを自分で育てていく場合、上の2つ

  • 婚姻費用
  • 財産分与
  • にプラスして

  • 婚姻離婚後から子どもが成人するまで「養育費

がもらえる可能性があります。

ここで、それぞれ、「もらえる可能性がある」といったのは、相手の収入と比べて自分の収入の方が高ければ(婚姻費用と養育費の場合)、また、夫婦の共有財産がなければ(財産分与)、場合によっては婚姻費用も養育費ももらえない可能性があるからです。逆に、支払わなければならない、という場合もありえます。

ご存じの通り、婚姻費用と養育費については、裁判所が算定表を出しています(こちら)。ネットに自分と相手の収入を入力すればおおよその婚姻費用と養育費を出してくれる、という便利なページがたくさんありますが、この算定表は2019年12月に改訂されましたので、ご使用されるページの計算ソフトが新算定表にのっとったものかは、確認してから使うようにしてください。

実際に自分で新算定表を使って確認したいという場合は、自分がどの表を見るべきかを確定します。離婚前の別居中(離婚するまでの)費用を見たい場合は、「婚姻費用」、離婚後の子どものための費用を見たい場合は、「養育費」となります。その上で、ご自分の家族構成に合わせた表を選択します。仮にお子さんが2人で、一人が15歳、もう一人が7歳、という場合であって、離婚前の費用を見たいという場合は、このリンク先の「表14」を見ていきます。なお、繰り返しですが、子どもがいない場合は、養育費はもらえません(支払う必要はありません)。

この表の見方は、自分がもらう側だという場合は、「権利者」(横軸)、自分が支払う側だという場合は、「義務者」(縦軸)となります。自分の収入と相手の収入が交差する点が、もらえる(支払う)金額の範囲、ということになります。2万円の幅が設けられていますが、これは、諸事情をみて判断していく、ということになります。

なお、これはあくまでも原則です。例えば、自分が浮気をしたり暴力をふるったりした場合(自分が有責配偶者にあたる場合)には、相手に婚姻費用を請求できない場合もあります。算定表にない家族構成である場合、収入が算定表を超える金額である場合など、算定表が直接的には使えないという場合も多々あると思いますが、おおよその目安にはなるでしょう。

そして、この算定表は、裁判所で、調停や審判となったときに基礎となるものですので、この表に関係なく、当事者同士で合意をすることは全く問題ありません。そのような合意をした場合、あなたがもらう側であれば、必ず公正証書にしましょう。そうでないと、仮に相手が合意を守らず支払ってくれない、となった場合に、裁判所を使って相手に強制的に支払ってもらうという手段を使えないからです。すなわち、改めて裁判所の手続を使わないと、泣き寝入りになってしまいます。

次に財産分与についてですが、これは、
   結婚後から離婚までの期間に夫婦で築いた財産を半分で割る
という形で出していくのが通常です。結婚前までにそれぞれが作った貯金や、結婚中であってもそれぞれが自分の親族から相続した財産は対象外です。

このように、ご自分が、別居後、離婚後にいくらくらいもらえるのか(支払わなければならないのか)のおおよその予想を立てていきます。離婚して子どもを自分が育てていく、という場合は、所得の金額によっては、子供手当の他に、子供扶養手当という公的な給付もあります。

戦略的に動く、というのは、この婚姻費用と財産分与の額を最大化(自分が支払う側である場合は最小化)する方向で動く、ということになります。

次回は、この点についてお話しできればと思います。
皆様の参考になりましたら幸いです。