【離婚】養育費(義務者の収入が不明の場合)

義務者の年収が分からない場合はどうしたらいいでしょう?

養育費の月額は、原則として、請求する人(子どもを養育している人。権利者とも言います。)と請求を受ける人(義務者)の年収によって決まります(詳しくはこちらのコラムをご覧ください。)。

 

ところが、離婚してから時間がたっている場合など、義務者の年収が分からないことがあります。義務者が調停や審判に出席すれば、年収の資料(源泉徴収票や確定申告書)を提出してもらうのですが、欠席することもあります。

 

そのような場合、調停手続において裁判所に調査嘱託の申立てをして、市(区)役所に義務者の納税(課税)証明書を提出してもらうことによって義務者の所得を明らかにするという方法があります。

 

この方法がうまくいかない場合、結婚していたときの義務者の年収などから現在の年収を推測していくといったことをしたりします。ですので、相手方の収入資料は重要です。収入資料とは、相手方の給与明細や源泉徴収票、給与の入金の記載のある預金通帳の写しなどです。離婚後すっきりしたいがためにこのような資料を一切処分してしまう方が多いですが、お子さんが未成年のうちは保存しておいてほしいと思います。

 

また、相手方と過去に養育費の合意をしたことがある場合は、そのときの金額が参照されることもあります。

 

場合によってはそうした資料が一切ない、結婚(交際)時にも相手の収入を聞いたことがない、養育費の合意もしたことがない、といったこともあります。そうした場合は、最後の手段として、賃金センサスが使われることもあります。裁判所によっては賃金センサスを使うのをためらうこともあるので、あくまでも最後の手段です。

 

賃金センサス(「賃セ」と言ったりもします。)とは、政府の調査に基づき、性別、年齢、学歴別に日本の労働者の平均収入を出したものです。実際にご覧になると分かりますが割と高い数字となっています。例えば、令和2年の賃金センサスでは、35歳~39歳の男女(学歴不問)の平均年収額は493万5000円、35歳~39歳の男性(大卒)の平均年収額は610万3500円です。

 

したがって、義務者側としては、調停に出ることなく、収入資料を出さなければ、自分に不利な判断が出ることはないだろうなどと手続を軽視、無視していると、とんでもない金額の債務名義(注)がいつのまにか成立していたということになったりもしますので、注意してください。

 

まとめ

このように、義務者の収入が分からないからといって養育費の請求ができないというわけではありませんので、決してあきらめないでください。詳しくはお気軽に専門家にご相談ください。

 

(注)「債務名義」とは、調停調書や確定した審判書、確定した判決書など、それに基づいて強制執行ができる文書のことです。債務名義があると、強制執行によって、不動産や給与を差し押さえることができます。