はじめに
ある日突然銀行口座から預金が引き出せなくなるという場合があります。刑事事件(詐欺)に巻き込まれてこのようなことが起こった場合は、できる限り早めに弁護士にご相談ください。
根拠法
刑事事件で口座が凍結される根拠法は、「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配当金の支払等に関する法律」(略称「振り込め詐欺救済法」)です。略称では「振り込め詐欺」となっていますが、対象となる犯罪には、振り込め詐欺だけでなく、架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金詐欺、ヤミ金融に関する犯罪等が含まれます。
取引停止等の流れ
一般的には、詐欺等の被害申告があってから、警察等が銀行に対して口座凍結の要請を出します。それを受けて、銀行は、その口座に関する取引を停止します(この現象を「口座の凍結」と言っています)。その際、銀行から口座名義人に対して、取引を停止した旨の通知がなされます。その上で、銀行は、口座名義人の本人確認を行い、事情を聴取して、警察の要請が正当であり、当該口座が犯罪に利用されていると判断した場合には、救済法に基づき、債権消滅手続開始の告知(失権公告)を行い(「債権消滅」は「失権」とも言い、口座名義人の預金債権を消滅させる、すなわち、口座にある預金を没収することを意味します。)、期限(60日以上)までに権利行使の届出等がなければ、口座内の預金を詐欺等の犯罪被害者に分配をしていきます。流れについてはこちらをご覧ください。
https://www.fsa.go.jp/policy/kyuusai/kyuusai_pdf/01.pdf (金融庁のウェブサイト)
対応
このように、この手続では、警察等が凍結を要請し、金融機関が嫌疑十分と認定すれば、簡単に取引停止となり、裁判所を通した令状などの慎重な手続を要していませんので、詐欺等の加害者とは無関係な人の口座が凍結されたり、本来であれば凍結されるべきでない事件で口座が凍結されたりするといったことも起こります。
仮にこうしたことに巻き込まれてしまった場合、なるべく早期に対応していく必要があります。失権公告がなされると訴訟が必要となってくる場合もありますので、できる限り失権公告が開始される前に阻止していきたいところです。
銀行からの通知に対して誠実に対応して、自らが犯罪に関与していないこと等を説明していく必要があります。
説明が不十分であったがために犯罪利用が不当に認定されてしまった場合、銀行の預金約款との関係で、強制的に口座が解約され、その後その銀行を利用できないといったことにもなりえます。
救済法による取引停止措置の通知がきたら、速やかに弁護士に相談されることをお勧めします。なお、実際に犯罪利用されている口座については、いかんともしがたく、救済法の本来の趣旨にのっとって、預金は被害者に分配されるべきですので、その点は御了承ください。