【離婚】離婚調停を弁護士に依頼するメリット――柔軟な解決ができる「調停」を活かすために

離婚調停は、弁護士に依頼しなくてもご自身で申し立て、手続を進めることができます。実際に、弁護士を付けずに調停に臨まれる方も少なくありません。

しかし、離婚調停は、単に裁判所で夫婦が話し合うだけの手続ではありません。

法律や実務を踏まえて条件を検討する必要がある一方で、裁判や審判よりも柔軟な解決を模索できる貴重な場でもあります。

そのため、離婚調停では、可能な限り調停の段階から弁護士に相談し、必要に応じて代理人として依頼することをお勧めします。

目次

1 調停の仕組みが分からないまま進んでしまうことがある

初めて家庭裁判所の調停に行けば、分からないことが多いのは当然です。

実際、ご自身で調停に対応された方から、

「相手に弁護士が付いていることもよく分かっていなかった」
「3人の人が出てきたが、それぞれ誰で、どのような役割なのか分からなかった」

といったお話を伺うこともあります。

調停では、裁判官1人と調停委員2人から構成される調停委員会が手続に関与しますが、通常、当事者が主に話をする相手は調停委員です。

こうした調停の仕組みについては、通常、手続の冒頭で調停委員から説明がされます。しかし、初めて家庭裁判所の手続に臨む当事者は緊張していることも多く、説明を受けていても、その内容が十分に頭に入らないことがあります。

制度の説明を受けることと、実際に自分がその手続の中で置かれている立場を理解し、適切に対応できることとは、必ずしも同じではありません。

2 緊張した状況で、自分の主張を十分に伝えるのは簡単ではない

調停では、調停委員が双方から交互に話を聞きながら、合意できるところを探っていきます。

しかし、普段から自分の主張を整理して第三者に説明することに慣れている方ばかりではありません。まして、離婚という精神的な負担の大きい問題について、家庭裁判所という慣れない場所で話をすることになります。

緊張して、本来伝えるべき事情を十分に話せなかったり、相手方の主張に対して適切に反論できなかったりすることもあります。

その結果、相手方から示された事情や主張が調停委員の理解の前提となり、それを踏まえた解決案を提示されることもあり得ます。

また、調停の目的は、当事者間の合意によって紛争を解決することにあります。そのため、双方の主張に大きな隔たりがある場合には、より説得しやすいと思われた側に譲歩を求めるような進行になることもあります。

弁護士が付いていないから当然に不利になるわけではありません。しかし、自分の主張を十分に伝えられず、法律上どこまで主張できるのかも分からない状態では、提示された案が妥当なのかを判断することも容易ではありません。

3 調停委員から示される解決案が、必ずしも法律実務上の結論とは限らない

調停は、裁判官が法律に従って結論を言い渡す手続ではありません。

双方が合意すれば、訴訟や審判で法律を適用した場合に導かれる結果とは異なる内容で解決することも可能です。これは調停の大きな長所ですが、反面、調停で提示された解決案が、訴訟や審判になった場合の結論と同じとは限らないということでもあります。

また、調停委員の構成や経験も一様ではありません。弁護士である調停委員が関与することもありますが、常に法律実務家が調停委員として担当するとは限りません。そのため、法律実務上一般的な考え方とは異なる説明や提案を受けることもあり得ます。

もちろん、法律上得られる可能性のある結果より譲歩してでも、早期に解決することが合理的な場合はあります。

重要なのは、

「法律や実務上の相場を知らずに譲歩すること」と、「法律上・実務上の見通しを理解したうえで、早期解決その他の利益を得るために譲歩すること」は全く違う

ということです。 弁護士が関与する重要な意味の一つは、法律上の権利や実務上の見通しを整理し、どこまで譲歩することが合理的なのかを判断するための材料を提供することにあります。

4 実は、調停だからこそできる解決がある

そして、調停段階で弁護士に相談することをお勧めする大きな理由がもう一つあります。

調停は、柔軟な紛争解決に非常に適した手続です。

訴訟や審判になれば、裁判所は基本的に法律に基づいて判断することになります。

これに対して調停では、双方が納得できるのであれば、個々の家庭の事情に合わせて、法律が直接予定していない事項を含めた解決を検討することができます。

離婚では、法律だけでは割り切れない問題が相互に関係していることがあります。

そのため、

「ある条件について譲歩する代わりに、別の条件を確保する」
「金銭的な条件だけではなく、離婚後の生活まで含めて条件を組み立てる」

といった、当事者の実情に即した解決を探ることができます。 特に離婚や相続は家族・親族間の紛争です。法律上の権利義務だけで割り切るよりも、当事者が今後どのように生活し、関係を整理していくのかまで含めて解決を考えられる余地を持っておくことには大きな意味があります。

5 不成立になってから弁護士に依頼しても、選択肢を取り戻せないことがある

「調停はまず自分でやってみて、まとまらなかったら弁護士に頼もう」

と考える方もいらっしゃいます。

もちろん、そのような進め方が適しているケースもあります。

しかし、調停が不成立になり、訴訟や審判などの次の手続に進むと、裁判所が法律に基づいて判断することになります。そのため、調停であれば可能だった柔軟な解決方法が取りにくくなり、解決の選択肢が大きく狭まることがあります。

その段階で初めて弁護士に依頼しても、

「調停の段階であれば、このような条件を組み合わせた解決を提案できた」

ということもあります。

一度失われた調停という解決の機会を、後から完全に取り戻せるとは限りません。 したがって、弁護士を代理人として依頼するかどうかは別としても、調停が大きく進んでしまう前に一度弁護士に相談し、どのような解決の選択肢があるのかを把握しておくことには大きな意味があります。

6 何を主張し、どの証拠を出すかも考える必要がある

調停では、自分の言いたいことをすべて話し、持っている資料をすべて提出すればよいわけではありません。

どの事実を主張するのか、どの資料を提出するのか、相手方にどのような資料の提出を求めるのかを、事案全体を見ながら判断する必要があります。

特に、調停が不成立となった場合には、訴訟や審判などの次の手続に進む可能性があります。

その可能性がある以上、調停の段階から次の手続を見据えて、

  • 何を主張するか
  • どの証拠を提出するか
  • まだ提出しない方がよい資料はないか
  • 相手方からどのような情報・資料を得ておくべきか
  • 相手方が不合理な主張を続ける場合、どの時点で調停による解決を断念して次の手続に進むか

を考えておく必要があります。

一度裁判所や相手方に提出した資料を、後から取り戻して「なかったこと」にすることはできません。自分に不利な資料を不用意に提出すれば、調停が不成立となった後の手続でも、相手方から利用される可能性があります。

逆に、相手方が不合理な主張を続け、調停による合理的な解決が期待できないのであれば、いたずらに調停を長引かせず、適切な時期に次の手続へ移行することが有利な場合もあります。調停だけを見るのではなく、その先まで含めて手続全体を設計することも、弁護士が調停段階から関与する意味の一つです。

まとめ―調停は「とりあえず自分でやってみる」だけではもったいない手続です

すべての離婚調停で、最初から最後まで弁護士を代理人として付けなければならないわけではありません。

事案によっては、ご自身で調停に出席しながら、期日の前後や重要な局面で弁護士に相談するという方法もあります。

しかし、調停は単なる「裁判の前段階」ではありません。

当事者の事情に合わせた柔軟な解決ができるからこそ、調停そのものが重要な解決の機会です。

自分にはどのような法的権利があるのか。訴訟等になった場合にはどのような結果が見込まれるのか。そのうえで、調停では何を目指し、何を譲り、何を確保するのか。そして、どのような主張・証拠を出すのか。

そうした点を整理したうえで調停に臨むことが、納得できる解決につながります。 離婚調停を申し立てようとしている方、調停を申し立てられた方、すでにご自身で調停を進めているものの今後の対応に迷われている方は、調停が大きく進む前の段階で、一度弁護士に相談することをお勧めします。

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